3年目の春

古典語塾の新しい年度が始まりました。すでにお知らせしたように、お勤めを持つ方々にも通えるようにと、時間割を変更しました。やっと、もっぱら古典語を読む知識を身につけるための民間の施設として、最低限の自立が可能な数の塾生に通っていただけるようになりました。現代を生きる人間にとっての必需としての古典語、というものに共感を寄せられる方々がちゃんといるという事実に安心し、また感謝しております。

 

正直に申し上げます。私はいわゆるヘレニスト、つまり古典学のなかでもギリシア語文献学を専門とする人間です。今日のヨーロッパという文明的アイデンティティーをめぐって、古典ラテン語によって書かれた文献が持つ意味を否定するような狭い郷党的意識は持ちませんが、それでもラテン語講座が2つとも小さな教室のキャパいっぱいに塾生がおり、ギリシア語教室はその半分にも満たない、という実情にやや不本意、の感想を持っております。

 

ギリシア古典世界は、人間社会のあり方として部族的共同体に代わる共同体の原理をはじめて模索した先達たちの、苦闘のあとを学べる領域です。文字は今となってはいくらかエクゾティック、多様な方言形の存在、と数えあげれば障害は小さくありません。しかし学ぶ価値は小さいどころではない、と信じています。年度の途中でも「自力で古典と格闘する」目標に向かって進めるよう協力は惜しみません。意欲ある学習者を広く求めます。

 

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